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リーン思考とモジュラー化を実現するための3ステップ

作成者: Anders Leine|2021/02/26 8:19:45

モジュラー化とリーン思考は強力な相乗効果を企業にもたらします。我々は、20年以上にわたるリーン思考の導入やモジュラー製品アーキテクチャ開発を通して、製品コスト削減、リードタイム削減、設備投資の抑制を実現してきました。いずれの事例においても、製品バリエーションを拡大しつつ、これらを実現されています。

リーン思考とモジュラー製品アーキテクチャでムダを最小化

ムダを最小限に抑える。リーンとモジュラー化の双方がこれを目指しています。そして、この2つを組み合わせるとその効果は相乗的に向上します。

 

リーン思考とは?

リーンという考え方は、ムダを最小限に抑えつつ、顧客価値を最大化することです。 そのためには、ムダを削除・削減させるような構造化された「働き方」と、それを継続的に改善し続けることが必要です。

つまり、リーンな組織というのは顧客が何に価値を感じているのかを理解しており、継続的な価値向上に繋がるプロセスに注力するものです。

繰り返しとなりますが、究極の目標は、ムダゼロな完璧なプロセスを通して、顧客に最大限の価値を提供することです。

リーン思考は、マネジメント上の焦点を変えました。従来は、個々の技術や資産、縦割り組織を最適化することに焦点をあてていました。しかし、リーン思考では、製品やサービスのバリューストリームの流れの最適化に焦点を当てたのです。

そのように築かれたバリューストリームは、技術、資産、組織を横串的に展開し、顧客に流れていくのです。

 

モジュラー化とは?

モジュラー製品アーキテクチャもまた、ムダの削減に一役買います。モジュラー化は、部品種類数の増加はバリューチェーン全体でコストの増加に繋がるとの解釈に基づいたアプローチです。モジュラー製品アーキテクチャにおいては、モジュールを顧客要求に基づいたバリエーション(派生)と部品間を標準化されたインターフェイスで接合するものと定義します。そうすることで、最小限のモジュールバリエーション数で最大限の製品バリエーションを実現できるのです。

 

プロジェクト成功に必要なこと

リーンとモジュラー化の実現には、企業風土の変革と、明確な戦略が必要です。

リーンやモジュラー化の導入目的は、コスト削減でしょうか?それとも、製品バリエーションの拡大でしょうか?新製品の開発期間の短縮でしょうか?プロジェクトを成功へ導くためには、こういった戦略的な宣言を明確化すること、そして、これらを主要な利害関係者の間で共通理解することが重要です。

 


複雑さに起因するムダを避けるには?

リーン思考と標準化

買収や新製品の投入に伴い製品バリエーションが拡大すると、製品ストラクチャーが複雑になりがちです。また既存製品を廃止していかなければ、莫大な量のレガシーを抱え、製品ストラクチャーの複雑化に拍車をかけます。市場要求もまた、複雑さの要因になり得ます。闇雲に顧客要求に応じて製品バリエーションを広げると、部品種類数の増加による複雑さを招く結果となるはずです。

利益が減少し始めると、コスト削減プロジェクトが立ち上がり、標準化活動により「手っ取り早く改善する」ということになっていないでしょうか。リーン生産方式も、改善策の一つとして挙げられます。これは生産効率の改善に繋がるかもしれませんが、それが企業にとって有効な策とは限りません(製品のバリエーションに制約を及ぼしていることがあります)。

真のリーン思考は何をもたらしてくれるのでしょうか。トヨタ生産方式(TPS)を例に見ましょう。TPSで重要なことは、まず、原価を意識すること、流れの正規化。そして、それらを効率的に行うことです。これがヒントです。

 

リーン思考とモジュラー化

製品開発は市場ニーズを理解することから始まるのが一般的でしょう。製品ストラクチャーは、様々なニーズに応えられるよう、柔軟で効果的でなければなりません。 

モジュラー製品アーキテクチャが効果的なのは、顧客要求と、構成可能性(コンフィギュラビリティ)を起点とするためです。プラットフォームの制限内であれば、製品は柔軟に変更でき、生産や調達などにおける社内業務を単純にし、少ないリソースで、将来、どのような要求が来ても柔軟に対応できるのです。

他にも、新製品の市場投入までの時間短縮、より幅広い製品バリエーションが提供可能になり、リードタイム短縮、製造コスト低減と品質向上といった利点が挙げられます。では、リーン思考とモジュラー化はどのように進めたらいいのでしょうか?

 

リーン思考とモジュラー化を実現するための3ステップ

Step 1. ムダと複雑さの分析

企業活動のムダを発見・排除するツールは数多くあります。 例えば5Sと継続的な改善活動です。 しかしながら、まず理解すべきは、どれだけ製品ストラクチャーが複雑であるか、また、複雑になっていったかの背景です。過度に複雑な製品ストラクチャーであれば、維持管理が困難なほどに大量の部品点数があるでしょう。既存部品の再利用は手間がかかるため、設計者は新図を起こしがちだ、ということもあるでしょう。

調達部品、製造部品の類別を問わず、様々な品質問題を抱えているかもしれません。社内を見まわして、もし、製品ストラクチャーが複雑そうであれば、まず、複雑さがどれ程のものか調査の上、複雑さ低減に向けた具体策を講じられることをお勧めします。

こういった複雑さは、様々な部門において余計な仕事を引き起こします。そして、余計な仕事を誘発する原因とは、設計部門にて製図された部品点数なのです。 その部品点数の数だけ、開発、テスト、試作、詳細設計、生産準備、製造、調達、輸送、入庫、在庫管理、品質検査、在庫引当、組立ラインへ搬送、最終製品への組込と、ざっと見てもこれだけの工数が必要なのです。つまり、少量多種の部品を用いる製品が、多量少種の部品を用いている製品よりもあらゆる工程で時間を要しているということです。

 

Step2. 効果的な製品ストラクチャーの構築

先述の通り、製品に内在する複雑さが低減されると、コスト構造も大きく変動します。典型的な製造業の例では、B2BB2Cに関係なく、一般的には部品種類数を50%削減できると、バリューチェーン全体でコスト10%削減に繋がると言われています。

モジュラー製品アーキテクチャは、モジュール間の接続部分であるインターフェイスを標準化することで、製品を自在に組み立てられるようにできます。それにより、内在する複雑さに対処することができるのです。いきなりリーン思考を既存の製品ストラクチャーに適用するのでなく、まず、この様な、製品を自在に組み立てられるような製品アーキテクチャを構築することが非常に重要です。部品種類数が多すぎる状態でリーン生産方式を導入したとしても、部品種類数過多による悪影響は残ってしまうため、効果は限定的になるでしょう。部品種類数が過多なままでは、部品の一括購入によるコスト削減効果が望めないことは、想像に難しくないでしょう。

一括購入によるコスト削減は、大きな効果を生み出します。一般的には、数%から10%の削減効果があると言われています。

この様な効果を出しながら、品質改善も図れるコスト削減プロジェクトは、他には無いのではないでしょうか?

重要なのはリーン発想的な製品アーキテクチャとモジュラー製品アーキテクチャが両立し得るという点です。双方、ベクトルは同じ向きです。つまり、顧客に価値と認識されない活動(=ムダ)の最小化が目的です。加えて、双方、ターゲットにしているのは個々の工程レベルでなく、企業のバリューチェーン全体です。 リーン思考を持った企業には、誤ったアプローチを採っている企業も散見されます。効率化の対象が誤っているのです。先述の通り、まず、部品種類数が少なくて済む仕組みづくりをすべきです。さもなければ、「効率化」を効率的で無いやり方で進めることになります。

 

Step3. リーン的発想の導入

モジュラー化とは、「いかに効果的か」が肝で、リーン思考とは、「いかに効率的か」が肝です。

田口メソッドの「まず、すべきことをしてから、それの効率化を図る」との考えに基づいてトヨタはTPSを構築しました。この考えからも、モジュラー化による「効果」向上を図った後に、それを「効率的」に組織全体に展開すべきだと考えられます。

モジュラー化とリーンは企業に強力な相乗効果をもたらします。我々は、20年以上にわたるリーン思考を兼ね備えたモジュラー製品アーキテクチャ開発を通して、製品コスト削減、リードタイム削減、固定資産の削減を実現してきました。そして、いずれの事例においても、製品バリエーション幅を拡大しながらです。

そして何より、提供可能な商品の幅が広がることにより、売上の拡大も見込めることになります。よく、モジュラー化とリーン思考的な無駄の排除のどちらから始めるべきか、もしくは同時並行で推進できるかとの質問を受けます。我々の経験では、まず、モジュラー化の実行をし、その後にリーン思考的な無駄の排除の導入が最善です。モジュラー化にリーン思考的な無駄の排除というターボエンジンを積むことで、競争優位が高まるのです。

 

 

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