コスト削減と売上増加を両立させる方法

モジュラー化がもたらす財務的効果算定方法

By Lars Gullander

モジュラー化の目標。それは、コスト削減をしながら(業務卓越性)、様々な顧客要求に応え(顧客親密性)、イノベーティブな製品を産み続ける(製品リーダーシップ)、この3点を同時に満たす事にあります。

モジュラー化成功のためには変化が伴います。つまりモジュラー製品アーキテクチャへの転換は、企業にとって変革を意味するのです。その変革に必要な事は、長期経営戦略と製品アーキテクチャを融合させる事、そしてモジュラー化による財務的効果を長期にわたって積み上げていく事です。

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会社全体やエグゼクティブから必要な支援を集めるためには、まずモジュラー化戦略のメリットを数値化し、事業目標に沿ったものにする必要があります。つまり、収集した現状のデータ分析に基づき、売上増加やコスト削減可能性などのビジネスケースのシナリオ構築が必要です。

この記事では、製品の複雑さを下げることによって得られる効果を計算する方法、直接材料費と直接労務費への影響を評価する方法、モジュラー化とコンフィグレーションによって得られる売上増大を評価する方法についてご紹介していきます。

 

参考動画:こちらの動画では、モジュラーシステムの効果について簡単に説明しています。

 

モジュラー化の第一歩 戦略立案

 

財務的効果の詳細に入る前に、重要な成功要因を見てみましょう。それは製品開発プログラムにおいて、まず戦略を固めることです。

モジュラー製品アーキテクチャは、技術的観点から開発されることがよくあります。当然、多大な労力をかけて開発するのですが、 そのアーキテクチャが会社の戦略や市場の真のニーズを反映していない場合、期待した効果を得ることは難しくなってしまいます。

モジュラー化へのロードマップに必要なのは、戦略を根付かせる事と、経営陣とベクトルを合わせる事です。 そのためには、Vision(ビジョン)の共有、Value(効果)の理解、Path(道筋)の合意が必要です。

 

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Vision(ビジョン)

モジュラー化による戦略目標の策定
モジュラー化によって得られるであろう効果の合意とモジュラー化プロジェクトの戦略的ゴールの策定

 

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Value(価値)

コスト削減、複雑さの削減、納期短縮の目標を設定
収益の増加と市場投入までの時間の短縮の分析
損益計算書上での収益改善効果をシミュレーション
 
 

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Path(道筋)

実現に向けた計画立案、スケジューリング
モジュラー化プロジェクトの戦略的ゴールの策定とこれを達成するために用いる指標(KPI)の策定

 

ここから、モジュラー化戦略の財務的効果算出方法について詳しく見ていきます。

モジュラー製品アーキテクチャの正確な財務的効果を算出することは不可能ではないのか、というご意見をよく伺いますが、算出は可能です。これにより、財務的根拠に基づいた開発プロセスの意思決定が可能になるのです。

 

参考動画:以下の動画では、モジュラー製品アーキテクチャを用いることで得られる効果の結果をもう少し詳しくご理解いただけるよう、具体例を用いながらご説明しています。

動画:モジュラー化とマスカスタマイゼーションがもたらす財務的効果とビジネス戦略について

 

派生製品(部品)削減に伴うコスト削減の道筋

 

製品種類数や部品種類数の増加に伴い、仕事をする上での「複雑さ」が増加します。この「複雑さ」が、様々なコストの要因となっているのです。コスト削減のポテンシャルを見積もるためには、まず、複雑さをどの程度まで削減できるかを把握する必要があります。

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この見積もりには、アソートメントアナリシス(製品ラインアップ分析)を用います。テクニカルソリューションのひとつひとつを分析することで、どのように派生製品が生み出されているか、ということが分るはずです。もしそうであれば、顧客要求を満たすためには必要なテクニカルソリューションの派生数を算出することになります。同時に、この分析において現状のテクニカルソリューションの種類数を算出します。テクニカルソリューションの必要数と現存数の比較から、削減ポテンシャルを算出することができます。

上の表では、現存の派生数と必要な派生数の比較を簡略的に示しています。

過度なバリエーションが存在する理由は様々なものがあるようです。その中でも典型的な理由のひとつに製品ラインアップが様々なプラットフォームの上で構築されているというものがあります。それらを1つのモジュラー製品アーキテクチャにまとめることで、不必要な重複を排除することができます。

 

複雑さの削減と、複雑さに起因するコストの削減

 

複雑さ削減に伴うコストの削減幅を導出する前に、まず、複雑さに伴うコストが全コストに対する割合を把握する事が重要です。 そのためには、全部門で執り行われている全活動を確認し、複雑さによって生じている活動を明確にしていきます。

分析結果は、以下の図(バリューマップ)の様に示せます。図の通り、コストセンター(販管費部門)のほとんどが、複雑さに起因する活動を抱えています。例えば研究開発部門での製品文書作成や、CADモデルの作成です。提供する製品毎に生じる活動もあります。 例えば、個々の製品におけるマーケティング活動がこれに該当します。部品を取り扱う業務(調達、物流、生産など)は、部品や製品の量に応じて変化します。そして、中には製品の複雑さの影響を直接受けない活動もあります。

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前述のアソートメントアナリシスによる複雑さ削減ポテンシャルと、本セクションで見た全部門を通した複雑性分析を組み合わせる事により、複雑さ削減に伴うコスト削減ポテンシャルが算定できます。例えば、部品の派生数を50%削減できたとしましょう(この数値は、現実的な値です)。

すると、下図に示す通り、個々のコストセンターの活動の大部分が削減でき、より生産的な作業をする余裕が生まれます。

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個別受注型生産のビジネスでは、同様の分析を使用して複雑さに起因するコスト削減ポテンシャルを判断することができます。現状のテクニカルソリューションの数による削減効果を考えるのではなく、現製品を構成する部品の組合せ性を、将来予測される製品アーキテクチャも考慮した構成にすることが必要です。

これによって、新たな部品を生成するという複雑さの削減ポテンシャルを算定することができます。この分析で対象にしているのは、各事業部のコストセンターではなく、プロジェクトの納期や、それに関するコストなのです。

 

「スケールメリット」による直接費の削減

 

購買や生産の直接コストもまた、大幅に削減することができます。ここでは、モジュラー化に関連してよく言及されるスケールメリットについてご紹介します。潜在的な効果を把握するために、先に述べた複雑さ削減計算を用います。

部品種類数削減(以降PNC削減)のポテンシャルは小さくありません。PNC削減による直接材料費削減(以降dM削減)の効果は製品の種類によって異なりますが、原理は共通しています。部品の派生数を減らすことで購入部品種類数を削減できます。これによりまとめて部品を購入しやすくなり、スケールメリットによって購入価格を下げることができるのです。

もう一つのコスト削減策は、プレス部品種類数の削減です。それに伴い、高価な金型の種類数を削減できるのです。

下の図は、部品の種類ごとの部品点数削減率に応じて、直接材料コストをどれだけ削減できるかを示しています。このグラフは一例ではありますが、実際のデータに基づいています

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開発と生産における更なるコスト削減

 

モジュラー製品アーキテクチャとマスカスタマイゼーションがもたらす効果は、複雑さに起因するコストと、直接材料費のみならず、開発と生産におけるコスト削減も期待できます。派生要因と、必要な派生が整理されていると、オーバースペックを最小限に抑えた設計が可能になります。 モジュラー化によりコンフィグレーションが可能となると、 バリエーションに依存する組立工程を遅らせたり、プリアセンブリの増加、スループットタイムの短縮など、生産最適化に向けた具体策がとりやすくなります。

設計と生産プロセスを最適化しながら、顧客に多様な製品を提供する。このバランスをいかにとるかが、お知りになりたい点ではないでしょうか。このトピックについての詳細は「Simplicity + Variety = Product Portfolio Success」 のブログ記事で紹介していますので、ご興味のある方はご確認ください。

 

コスト削減と売上増加の両立

 

モジュラー化で最も重要なことは、戦略的なビジネス目標を達成することです。 これらについては、以前に「業務卓越性」、「顧客親密性」、「製品リーダーシップ」といった戦略三軸で説明しました。

業務卓越性の目標達成には、販管労務費のみならず直接材料費も削減する事が必要です。コンフィグレーションができるようになると、顧客ニーズや仕様の変化に容易に対応できるようになります。

また、新機能や新部品はより容易に、迅速に追加できるようになります。こうする事で、顧客親密性を向上できるのです。

イノベーティブな製品への迅速な対応や、新製品開発リードタイムの短縮化などにより、製品リーダーシップを高める事ができます。

これらの効果の多くは、売上増加を助けるのに役立ちます。

上記の通り、「業務卓越性」、「顧客親密性」、「製品リーダーシップ」をバランスよく伸ばすモジュラー製品アーキテクチャは、売上増とコスト削減の両面に効果を発揮するのです。

売上の増加は、社内要因のみならず、社外要因にも影響を受けます。社外要因は不確実性をはらむため、明確な効果を算出することは困難です。しかしながら、ビジネスケースとして考慮すべき点です。それに比べてコスト面は予測が立てやすいです。また、モジュラー化プロジェクトの多くは、社内コストの削減だけでも採算がとれます。

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このブログでは、モジュラーシステムの財務的効果算出方法の中で最も重要なステップをいくつかご紹介しました。 しかし、モジュラー製品アーキテクチャによるコスト削減ポテンシャルを明確にしたい場合は、さらなる計算ステップが必要であることをご理解ください。

推奨する参考資料:実際にどのようなプロジェクトが行われているかご興味のある方は、ぜひ弊社のウェブサイトでご紹介しているケースストーリーをご覧ください。

 

コスト削減+売上増加=モジュラー化戦略の強い味方

 

モジュラー化戦略の財務的手法を知ることは、モジュラー化に取組む際に必要なことです。この知識は、モジュラー製品アーキテクチャの構築にも大きな影響を与えます。この活動は企業全体の変革であるため、適切な支援体制を確保すること、またこれに優先度をもって支援を受けられるようにすることが非常に重要です。そのためには、首尾一貫したビジネスケースが必要となります。

もし貴社がモジュラー化による財務効果を分析される際は、以下のパラメータについてご留意ください。

  • テクニカルソリューション削減予測値(ポテンシャル)
  • 複雑さに起因するコストの削減額
  • 直接材料費の削減額
  • モジュラー化とマスカスタマイゼーションによる財務的効果の予測値
  • モジュラー化製品になることでの売上増加額
  • 将来のモジュラー製品アーキテクチャのための戦略的な要因

さて、どのようなやり方で、これらのコスト削減可能性の定義を行うのでしょうか?以下の動画では、具体的なポテンシャル分析の進め方について、弊社の経験の一部をご紹介しています。

動画:モジュラー化とマスカスタマイゼーションがもたらす財務的効果とビジネス戦略について

 

モジュラーシステムが貴社や貴社の製品にどれほどの財務的メリットをもたらすのかについて、さらにご興味のある方はお気軽に弊社までお問い合わせください。貴社の状況に合わせたディスカッションをできればと思います。

 

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